商品の定義を深める
ここでの目的は、「基本機能」を踏まえて
① 基本機能=目的に対する「手段」として二次機能以下をとらえる
② 機能←機能←機能・・・を連鎖させる
③ この展開の中で、「不要機能」を見つける
ということです。
機能の整理表
No.1
<対象>
表生地
<基本機能>
・雨から濡れることを防ぐ
・風による雨の吹き付けによって濡れることを防ぐ
<2次機能>
雨をはじく
<3次機能>
流れ落ちる
No.2
<対象>
・徽章
<基本機能>
・学校がどこかを表す
・学校が名門である場合は、ブランドを表す
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.3
<対象>
長さ
<基本機能>
・足元からの吹きつける
・雨からの濡れを防ぐ
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.4
<対象>
コーティング
<基本機能>
雨の浸透を防ぐ
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.5
<対象>
生地
<基本機能>
・雨の浸透を防ぐ
・蒸れを緩和する
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.6
<対象>
裏地
<基本機能>
・蒸れを防ぐ
・デザインの安定性を保つ
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.7
<対象>
ハトメ・ホック
<基本機能>
・学校がどこかを表す
・デザインの一部である
・合羽をとめる
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.8
<対象>
袖
<基本機能>
・雨の浸透を防ぐ
・腕を自由に使える
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.9
<対象>
襟
<基本機能>
・デザインの一部である。
・下に着ている服が直接肌に触れないようにする
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.10
<対象>
縫製
<基本機能>
形をつくる
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.11
<対象>
ボタンかがり
<基本機能>
ボタンがとれないようにする
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.12
<対象>
織りネーム
<基本機能>
・当社がつくったことを表す
・商品名を表す
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.13
<対象>
サイズ表示
<基本機能>
サイズが何であるかを知らせる
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.14
<対象>
袋
<基本機能>
・納品までに汚損しないようにする。
・商品が何であるかを知らせる
<2次機能>
なし
<3次機能>
なし
No.15
<対象>
ポケット?
<基本機能>
??
<2次機能>
??
<3次機能>
??
商品の機能の定義
学校指定(制服)雨合羽の機能には次の様なものがあります。
・表生地・・・・・・・雨から濡れることを防ぐ。風による雨の吹き付けによって濡れることを防ぐ
・校章・・・・・・・・学校がどこかを表す。学校が名門である場合は、ブランドを表す
・長さ・・・・・・・・足元からの吹きつける雨からの濡れを防ぐ
・コーティング・・・・雨の浸透を防ぐ
・生地・・・・・・・・雨の浸透を防ぐ。蒸れを緩和する。
・裏地・・・・・・・・蒸れを防ぐ。デザインの安定性を保つ。
・ハトメ・ホック・・・学校がどこかを表す。デザインの一部である。合羽をとめる。
・袖・・・・・・・・・雨の浸透を防ぐ。腕を自由に使える
・襟・・・・・・・・・デザインの一部である。下に着ている服が直接肌に触れないようにする
・縫製・・・・・・・・形をつくる
・ボタンかがり・・・・ボタンがとれないようにする
・織りネーム・・・・・当社がつくったことを表す。商品名を表す
・サイズ表示・・・・・サイズが何であるかを知らせる
・袋・・・・・・・・・納品までに汚損しないようにする。商品が何であるかを知らせる
・ポケット・・・・・・?
ポイント
機能の定義は上記のように
・ズバリと簡潔に表現する
・解釈が多様にならないように、明確に表現する
・機能の定義に漏れがないようにする
という点が重要です。
商品を目の前に置いて定義をしていくのですが、なかなかうまくできません。
例えば、デザインの安定性、デザインの一部であるという表現がありますが、抽象的で解釈に紛れが発生する危険性があります。
前号で挙げた情報は、商品にかかわる市場と業種・業界情報です。
市場にかかわる情報を収集しない限り、
・自社の商品の市場における位置づけ
・経営戦略
・商品開発の方向
・コストダウンの方向
などを理解することはできません。
今号では、商品に焦点を当てて情報を収集してみましょう。
商品の一般的な情報
『雨合羽』という商品にかかわる情報は以下のようになります。
雨合羽の一般的な情報№1
<項目>
・素材
<内容>
・合繊である
・裏地も合繊
・素材証明のテストが必要とされる
№2
<項目>
・付属品
<内容>
・ボタン
・ファスナー
・ハトメ・ホック
№3
<項目>
・縫製
<内容>
・防災用の雨合羽には相当な堅牢性が求められる
№4
<項目>
・ムレ
<内容>
・ムレない処置が必要とされるが、ほとんど考慮されていない
№5
<項目>
サイズ
<内容>
・男性大人用は7種類、女性大人用は5種類あれば完全だと思われるが、多くの場合は3種類である
№6
<項目>
・軽快性
<内容>
・あまり考慮されていない
№7
<項目>
・浸透性
<内容>
・コーティングが施されている
№8
<項目>
・必要な技術
<内容>
・コーティング
・縫製
・デザイン
・サイズ
・生地の選択・開発
・ムレ防止・放熱性
・軽快性
・堅牢性
商品にかかわる目的情報
上記の分析は『雨合羽』に関する一般的な情報です。
これに対して『目的情報』というものがあります。
それは、『小学校の指定雨合羽(制服)』に求められる品質・機能は何か?という課題です。
小学校の指定雨合羽(制服)の情報
№1
<何のために>
・ニーズに合った商品を作るために
<何を知りたいか>
・カラー
<だからどうする>
・情報源、種類、形式、収集者、精度・信頼度、量
・伝統のある学校が多く、スクールカラーがある
・微妙な色だしが求められる
№2
<何のために>
・堅牢性を確保するために
<何を知りたいか>
・素材
<だからどうする>
・情報源、種類、形式、収集者、精度・信頼度、量
・合繊である
・裏地も合繊である
・素材証明のテストが必要とされる
№3
<何のために>
・より学校のブランドを生かすために
<何を知りたいか>
・付属品、カラー
<だからどうする>
・情報源、種類、形式、収集者、精度・信頼度、量
・ボタン、ハトメ・ホックにも校章が求められる場合がある
・スクールカラーには微妙な色合いが求められる
№4
<何のために>
・必要な縫製の強度の認識
<何を知りたいか>
・強度
<だからどうする>
・情報源、種類、形式、収集者、精度・信頼度、量
・二重縫製が求められる
№5
<何のために>
・健康のために
<何を知りたいか>
・ムレ
<だからどうする>
・情報源、種類、形式、収集者、精度・信頼度、量
・ムレない処置が必要とされる
№6
<何のために>
・軽快性
<何を知りたいか>
・重さ、デザイン、長さ
<だからどうする>
・情報源、種類、形式、収集者、精度・信頼度、量
・重い、長いと軽快性に欠ける
・素材選択にも影響
・デザインにも影響
№7
<何のために>
・ロス防止のために
<何を知りたいか>
・サイズ
<だからどうする>
・情報源、種類、形式、収集者、精度・信頼度、量
・男女共に3サイズが一般的である
・サイズ別比率
№8
<何のために>
・コーティングの堅牢度を知る
<何を知りたいか>
・堅牢度
<だからどうする>
・情報源、種類、形式、収集者、精度・信頼度、量
・コーティングの種類
・コーティングのあり方
№9
<何のために>
その他
<何を知りたいか>
その他
<だからどうする>
その他
以上のような形で『目的情報』を収集します。
VE教育の必要性
ここまで読んでこられた人は
・当社の製造スタッフでは、到底このようなことはできない
・当社の製造スタッフならしっかりと教育すればこの程度のことはできる
という2つのグループに分かれると思います。
その基礎には『漫然と、製造させているか』『品質管理を現場で行っているか』の違いが存在しています。
品質管理を現場で行い、不良が発生すると直ちに『特性要因図を書き、不良の真因の発見に努める』という行動をとっている企業は現場に実力があります。
品質管理ができるようになると、次はVEを習得しようと現場に提案できるのです。
そうでない場合は、『製造管理者の必須能力』『営業担当者の必須能力』『開発担当者の必須能力』『設計担当者の必須能力』として位置づけ、VEの芽を社内に植え付けていくことが重要です。
『節約』はコストダウンの一部ですが、コストダウンそのものではありません。
コストダウンは商品のコストダウンが占める割合が極めて大きいのです。
実務の足は長いのです。
情報とは
例えば、『雨合羽』の情報としては次のものがあります。
商品に関する情報
№1
<分野・領域>
・市場
<情報>
・ワーキング
・学生・生徒
・自衛隊、消防、警察、警備保障会社、新聞店舗
・婦人用
№2
<分野・領域>
・生産地
<情報>
・中国生産が多い
№3
<分野・領域>
・素材
<情報>
・素材は合繊である
№4
<分野・領域>
・ワーキング・婦人の販売チャンネル
<情報>
・ホームセンターでの販売が多い
№5
<分野・領域>
・ワーキングの業界の動向
<情報>
・ホームセンター向け商品を作っているメーカーの企業規模が大きい
・ホームセンター向けのメーカーは利益が出ていない
・デザインは固定しており、楽しくない
・ホームセンターはプライスマーチャンダイジングを展開しており、2980円が最も売れている
・ホームセンターはプライベートブランド化を進めており、メーカーが排除されている
・メーカーはひどい目にあっているにもかかわらず、販売先がないことからホームセンタ
ーにすり寄っている
№6
<分野・領域>
・自衛隊、消防などの直需の状況
<情報>
・自衛隊、消防、警察などの雨合羽は、丈夫(堅牢)で、かつ活動的でなければならず、ベストプライス商品である
№7
<分野・領域>
・自衛隊、消防などの直需商品の現状
<情報>
・既存の商品は、堅牢さだけを追求しており、重く、活動的でない
№8
<分野・領域>
・小学校の直需
<情報>
・学習院、女子学院、慶応、同志社、青学など小学校の直需がある
・直需の価格は2千円以上高く、5000円から8000円である
・カラーはスクールカラーにしなければならない
・デザインは学校ごとに起こす必要がある
・サイズは6サイズ程度で集約できる
・一度、決定されると変更は少ない
・イニシャルコスト(営業訪問、サイズ決定、デザイン決定、カラー決定、納品価格・取引条件の決定、物流、受注方法、フォローの方法など)がかかるが、次年度からはほとんどかからない
・相手先のスィッチングコストはゼロである(在庫をほとんど持っていない)
№9
<分野・領域>
・コスト構造
<情報>
・裏地、付属品などのコストをあまり考えていない
・大ロット生産ばかりを追求している
・生地を共通化すれば、一つ一つが小ロット生産であっても全部を合わせれば数量は多くなる
№10
<分野・領域>
・品質管理
<情報>
・一部に粗悪品がある
・社内の品質管理基準を明確にして、それを適用する必要がある
№11
<分野・領域>
・当社の戦略
<情報>
・ホームセンター市場には販売しない
・消防、警察、新聞舗、小学校、中学校などの直需市場をターゲットとする
№12
<分野・領域>
・当社の販売チャネル
<情報>
・制服屋チャネル
・直接訪問
№13
<分野・領域>
・当社の商品
<情報>
・極めて堅牢度が高く、かつ、行動性が求められる商品分野
・伝統のある名門小学校を中心とした指定商品
・アクティブな中学生・高校生を中心とした指定商品
№14
<分野・領域>
・実用新案等の知的財産に関する情報
<情報>
・ファッション性が低く、長期間固定したデザインの商品をホームセンターでは販売している
・このため、創意工夫がコストダウンのみにとどまっている
・実用新案は『ランドセルを背負っても着ることができる雨合羽』『袖の着脱が可能な雨合羽』『雨が浸透しにくい素材開発』とあったものである
・これらはすべて当社が保有している
№15
<分野・領域>
・当社のコストダウン戦略の基本
<情報>
・当社は売上高が小さい割には業界最高の高収益企業になっている
・それは粗利益率の高さ、営業効率の良さなどによってもたらされている
・今後はコストダウンをはかると同時に高品質の商品を作るという二律背反を追求することを基本とする
・それによって、ものづくりの技術全体を向上させていくようにする
・製造は当然のことであるが、経営管理者、営業担当者、デザイナーの必須のスキルとしてコストダウンを求めるということである
テーマにする課題
説明がしやすく、また理解がしやすいということで、商品のコストダウンを中心にVEを説明してきましたが、VEは工程、製造方法なども含めた総合的なコストダウン手法です。
ここでは、どのようなテーマを解決できるかを見ておきましょう。
◆VEのテーマに対する切り口
№1
<分野・分類> 商品
<内容> 複雑な商品
№2
<分野・分類> 売価・原価高
<内容> 原価が高く、売価も高い商品
№3
<分野・分類> 工程数
<内容> 工程数の多い商品
№4
<分野・分類> 売れる可能性
<内容> 今後売れる可能性の高い商品
№5
<分野・分類> クレーム
<内容> クレームの多い商品
№6
<分野・分類> 労務費
<内容> 労務費比率の高い商品、人、工数が多い商品
№7
<分野・分類> 外注
<内容> 外注のある商品
№8
<分野・分類> 未改良
<内容> あまり見直しをかけていない商品
№9
<分野・分類> 利益
<内容> 利益が出ていないが製造数が多い商品
№10
<分野・分類> 小さな投入努力
<内容> メンバーの実力に合致、単純なテーマ、設計期間が短い、時間をあまり要しない、情報収集が簡単
テーマ候補
以上で理解できるように、コストダウン要素は
・自分たちの能力に見合った課題
・複雑な商品
・これから売れる可能性のある商品
・工数が多い商品
・労務費比率が高い商品
・原価が高い商品
・クレームが多い商品
いった点にあります。
特に留意すべき点は、『自分たちの実力に見合った課題に挑む』ということです。
いきなり高度な課題、大成果の上がる課題に挑戦しても、現状分析能力が低いため、コストダウン対策に気付くことができないのです。
コストダウンに気付くポイントは『情報収集』にあります。