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経営論集

第128号 経営者のためのソリューション論-15 テーマとして取り上げる課題2008.10.24 (金)

テーマにする課題
説明がしやすく、また理解がしやすいということで、商品のコストダウンを中心にVEを説明してきましたが、VEは工程、製造方法なども含めた総合的なコストダウン手法です。
ここでは、どのようなテーマを解決できるかを見ておきましょう。

◆VEのテーマに対する切り口
№1
<分野・分類> 商品
<内容> 複雑な商品

№2
<分野・分類> 売価・原価高
<内容> 原価が高く、売価も高い商品

№3
<分野・分類> 工程数
<内容> 工程数の多い商品

№4
<分野・分類> 売れる可能性
<内容> 今後売れる可能性の高い商品

№5
<分野・分類> クレーム
<内容> クレームの多い商品

№6
<分野・分類> 労務費
<内容> 労務費比率の高い商品、人、工数が多い商品

№7
<分野・分類> 外注
<内容> 外注のある商品

№8
<分野・分類> 未改良
<内容> あまり見直しをかけていない商品

№9
<分野・分類> 利益
<内容> 利益が出ていないが製造数が多い商品

№10
<分野・分類> 小さな投入努力
<内容> メンバーの実力に合致、単純なテーマ、設計期間が短い、時間をあまり要しない、情報収集が簡単


テーマ候補
以上で理解できるように、コストダウン要素は
・自分たちの能力に見合った課題
・複雑な商品
・これから売れる可能性のある商品
・工数が多い商品
・労務費比率が高い商品
・原価が高い商品
・クレームが多い商品
いった点にあります。

特に留意すべき点は、『自分たちの実力に見合った課題に挑む』ということです。
いきなり高度な課題、大成果の上がる課題に挑戦しても、現状分析能力が低いため、コストダウン対策に気付くことができないのです。

コストダウンに気付くポイントは『情報収集』にあります。

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第127号 経営者のためのソリューション論-14 改革ストーリーとVEストーリー2008.10.23 (木)

全体の改革ストーリー
VEを実施するためには、『基本ステップ』と呼ばれるものに沿って展開することが求められます。
VEの基本ステップは以下の通りです。

VEの基本ステップ
◆第1ステップ
<具体的な課題>
問題点の発見
<内容>
①コストダウンが必要な商品をあげる
②意見を戦わせ、意見を集約する
③コストダウンを行う商品を決定する

◆第2ステップ
<具体的な課題>
期待する成果の確認
<内容>
①どの程度の成果を期待するか・できるかを検討する
②暫定的な目標値を決定する
③この時点で上司の承認を得る(上司の権限を超える場合があるが、良いことをしようとしているので了解する)

◆第3ステップ
<具体的な課題>
実行計画の確立
<内容>
①分担を決める
②基本スケジュールを立てる

◆第4ステップ
<具体的な課題>
現状分析
※このステップで次のVEステップに基づき分析を行う
<内容>
①VE分析を行う
②他の企業の商品についても分析する
③その他必要な分析を行う

◆第5ステップ
<具体的な課題>
対策の確立と組織からの承認
<内容>
①提案した商品のコストダウン案をさらに具体的なものにする
②組織内の承認を獲得するために上司を巻き込んで行動する
③試作を行う
④コスト計算を行う

◆第6ステップ
<具体的な課題>
対策の実施
<内容>
①対策を実施する
②組織内を粘り強く説得する

◆第7ステップ
<具体的な課題>
効果の確認
<内容>
コストダウン効果を確認する

◆第8ステップ
<具体的な課題>
標準化
<内容>
①仕様を確定する
②コストダウン方法を組織内に形式知として開示する

『すべての結果はプロセスの良し悪しで決まる』という服部改善語録があります。
以上のような思考・行動ステップを設計して、コストダウンに当たることになります。


VEストーリー(VEステップ)
第4ステップは現状分析になっています。
第4ステップが『VEストーリー』となります。

ステップの中にストーリーがあるということになります。
QC、IE、VEは『改善の3点セット』であると述べました。
QCには有名な『QCストーリー』があります。
これと同様にVEにも『VEストーリー』があります。

VEストーリーは次の流れになります。
第1ステップ 情報を収集しコストダウンを図る商品を決める
第2ステップ 商品が保有する機能を定義する
第3ステップ 機能を整理する
第4ステップ 機能の評価を行う
第5ステップ 無駄な機能を排除する案を確立する
第6ステップ 改善案を様々な視点から評価する
第7ステップ 改善策を試行する
第8ステップ 効果がありそうなことを確認して提案する

これは覚えてスラスラと言えるようにすることがポイントです。


VEとQCの大きな違い
QCと異なる点は改善策の実施ではなく、『試行』という点にあります。
QCは自分の職場が抱えている問題の解決を図るものであり、上司の了解程度で対策を実施できるが、VEはそうはいきません。
なぜなら、現在販売中の商品を対象として取り上げているため、製造部などのコストダウンを図るグループが勝手に仕様変更その他を行うことができないからです。

慎重な取り扱いが求められ、『試行』という形になるのです。
このために、機能に異常が発生しないかという点検、時には『試作』が必要とされる場合もあるのです。

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第126号 経営者のためのソリューション論-13 コストダウンの視点2008.10.11 (土)

商品の構成要素
商品は
①基本機能
②特定の顧客が求める機能
③自社が持つ優れた点
④各種の無駄
⑤不要な機能
などによって構成されています。

このうち、①②③だけにしてしまえば、利益が大きくなるという考え方がVEです。


求められる機能評価能力
ここから求められる評価能力は
・自社の持つ優点
・基本機能
・各種の無駄のあぶりだし
という3点です。

ここで重要なことは
・他社との差別化点に対する正しい評価
・基本機能の認識
という2点です。

各種の無駄は基本機能が明確にされてから、基本機能の果たす役割・価値を減じることなく、素材転換、部品の減少などの対策が考えられていくことになるのです。


自社の持つ優点
コストダウンによって自社の持つ優点を喪失させてしまうと、商品が売れなくなってしまいます。

差別化・優点は
・サイズ
・使い勝手の良さ
・重量
・機能の次元が高い(スピード、短時間、大量に処理できる)
・操作性
・設置が簡単
・他社の商品ではできないことができる
といった点にあります。

これらは『売れる理由』=『優れたベネフィットの提供』に該当しており、コストダウン対象からは外されることになります。

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第125号 経営者のためのソリューション論-12 VEのポイント2008.10.10 (金)

VEのポイント
VEのポイントは『不要機能が見つかるとそのコストはゼロにできる。また、目的や働きに比べコストが高いことに気がつくと大幅な低減が可能となる』※1 という点にあります。

つまりVEは、
・不要な機能を発見して排除する
・目的や機能を明確にし、そのコストが高い場合は目的・機能の価値を減じないことを前提にコストを低減させる様々な方法(素材変更、部品の数の減少、モジュール化、部品の共通化・・・)などを行う
というものです。

仕入先に対して納品価格を叩いてコストを下げるのではなく、コストダウンの方向を明確にして、仕入れ先の協力を仰ぐこともあるという正しいコストダウンの方法なのです。


勘が良い人について
勘の良い人はすでにVEの本質は、機能評価能力の培養にあると気づき始めています。
『経営脳』とは、この勘の良さが占めている部分が大きいのです。
それは『右脳』の働きによるものです。

『経営脳』は、『不要機能が見つかるとそのコストはゼロにできる・・・』という箇所を読んだと同時に『そうだ!不要な機能がたくさんついている商品がある。不要な機能を排除すればよいのだ』と頭が回転を始めるのです。
『うちのあの商品はもっとシンプルにできるはずだ』と考えて、しばらく文章を読むことが中断されていると『経営脳』が働き出していることになるのです。

逆に言うと、この文章の続きを読むことを停止して、自社商品の機能の無駄の発見に思いを馳せると『経営脳』が鍛えられるということなのです。

続いて、『目的や働きに比べコストが高いことに気がつくと・・・』という箇所でも立ち止まらなければなりません。
『これは何だ?どういうことなのだ?』という疑問を持つということです。

『目的や働きに比べコストが高いということ』は、『あのセンサー、あの部品、あのスイッチ、あのボタン、あのフック、あの穴あけ、あのコーティング、あの研磨、あの切削、あの素材・・・』というように、頭がぐるぐると回転することによって獲得されるものなのです。

多くの人は本や文章を立ち止まることなく、途中で思念を巡らせることなく、つまり考えながら本を読むということをせずに、いわばスムーズに読んでいるのです。
これを『読み流し』といいます。

本を読むということは、
・現場の事実に照らして、現場に適用できないか
・自社の現状と比較して、もっと優れた方法がないか
・自分ができているのか、できていないのかということを明確にして能力向上に生かす
といった形を表しているのです。

こうすることによって、本に書かれていることを深く理解することができ、自己の体に突き刺さり、能力向上に行かせる形で本を読むことができるのです。
すると、本を読みながら思念がグルグルと巻き起こり、『経営脳』が訓練・鍛錬されるということになるのです。

『知識を増やす』という読書の方法から『経営脳を鍛える』という読書の方法に変えることが課題です。
つまり、読書が目的ではなく、書かれていることを契機として自己が抱えている現場に適用し、新しい<解>を求めることが読書の目的であると考えるのです。

コストダウンの方法を考案するために、VEを学習するのです。

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※1 石原勝吉著 『VE活動の進め方』(日本科学技術連盟)1984年

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第124号 経営者のためのソリューション論-11 VE2008.10.03 (金)

石原勝吉氏の『VE活動の進め方』に思うこと
ここに『VE活動の進め方』という一冊の本があります。
これは石原勝吉氏の著書であり、日科技連から刊行されています。

私が持っている本は一刷目であり、1884年に刊行されています。
今から、24年も前の本です。
石原氏が松下電器の顧問を退職された直後に刊行されたものです。

私はこれまでに5度蔵書を捨てています。
本を捨てるということは、自分の体内にある古い考え方、使い物にならなくなっている経験、こびりついて離れないカビの生えたような理論を払拭したいからです。
しかし、この『VE活動の進め方』という本は捨てることができず、今も本棚に鎮座しています。
その理由は
・VEがコストダウン専用の手法である
・新製品の開発時に設計段階からコストダウンを行うべきである
・商品開発時に必要な理論、フレームワークとして学ぶ必要がある
という点にあります。

VEとは『バリュー・エンジニアリング』の略であり、VAと同一と考えてよいものです。
企業内の実務家も経営コンサルタントも多くの本を読むことができません。
良書に巡り合い、それに基づいて実践していくことが求められています。
『VE活動の進め方』は小さい本ですが、良書で大切にしたいと思っています。

『VE活動の進め方』が刊行された1984年に私は38歳でした。
その前年の1983年に『流通・サービス業のTQC』を日本実業出版社様から刊行していただき、かろうじて経営コンサルタント業界に踏みとどまれた時期でした。
経営コンサルタント業界に進出して5年程度の駆け出しの頃でした。
この少し前にポーターが登場しました。
また、ウォーターマンとピーターズによる『エクセレントカンパニー』が刊行されました。

私は経営戦略論から現場のコストダウンというかけ離れた領域を妻子を抱え、食わんがために必死に勉強をしていました。
現場に対して私を強くしてくれた本として、まず『VE活動の進め方』を挙げます。
なお、このVEの背景をもって商品開発を行う必要があるということを付記しておきます。


改善・改革の基本手法3点セット
企業内実務家、現場指向の経営コンサルタントが避けて通れない学習対象となるものが
・QC
・IE
・VE
という『改善・改革の基本手法3点セット』です。

QCは統計的手法に基づき、要因系の課題のソリューションに役立てることができます。
むしろ、QCを知らないと現場の問題のソリューション指導はできないと考えられます。
もちろんマーケティングも有効ですが、背景にQCのストーリーと改善手法の習得・適用があれば、『マーケティング×QC』という図式で強力なソリューション能力を具備することができます。

IEは『業務改革』に適用できる理論と手法を持っています。
『業務改革』とは定常業務を抜本的に改革することであり、IEを知らないと多工程の分析ができません。
現場に強い、現場の仕事が改革できるということは、すなわちIEを適用しているということになります。

そして、『VE』は製品の持つ機能を分析し、不要な機能を排除します。
また、必要な機能に対するコストを計量し、もっと優れた他の方法によって製品がつくれないかなどを調査・研究・実践する理論と手法を持っています。
製品そのもののコストダウンを図る理論と手法が『VE』ということになります。

現場最前線に対して、『コストダウンをはかれ』と言いつつ、その一方で製造原価の高い、無駄だらけの製品を作り続けているとしたらお笑い草です。
重要なことは、現場最前線の英知の結集によって、製品のコストダウンを図ろうとすることです。
これが『VE』なのです。
もちろん、設計、開発部門にも浸透させ、あらかじめコストの安い製品開発に生かすこともできます。


経営管理者必須の能力が3点セットである
製造現場だけではありません。
事務、営業、その他の部門の経営管理者は
・要因系の課題解決・・・QC的アプローチ
・業務改革・・・IE的アプローチ
・必要な機能=本質を見抜き強化する、他は排除する・・・VE的アプローチ
という3つのソリューション能力を身につけていないと、現場(部下)の指導・援助・アドバイスができません。

逆に言うと、この3つを身につけていると、現場で発生する問題に対して、ソリューションの糸口を見つけることができる、あるいはソリューションのためのステップ設計が可能になるのです。

何回でも、そしていつまでも言い続けますが、『会社は優れた経営管理者を設置』しなければなりません。
そうでないと、業績も向上しないし、人材も育成されません。
『業績向上』と『人材の育成』のいずれにも適用可能なものが、『QC』『IE』『VE』の理論、思考ステップ、手法なのです。

卑近な例として私をあげます。
私に対して、『このおっさん、なんやねん。何でこんなに現場を知っとんねん』という印象を持つ人が多くいらっしゃいます。
それは私が上記の3点セットを割とていねいに学習してきた過去があり、現場に潜り込んで、毎日のようにコツコツ、モゾモゾとソリューションのお手伝いをやってきたからです。


急がば回れではない
『QC』『IE』『VE』は基本的素養であって、急がば回れということではありません。
これは直ちに現場で使用ができるものであり、かつ、ソリューションに有効なものです。

3点セットを学習しないまま、いいかげんな応急処置の連続で15~25年過ごし、経営管理者にさせていることに問題があります。
応急処置やガンバロォーの連続でソリューションをしたこともない、またソリューション能力がない者を経営管理者にしているために経営、組織がおかしくなっているのです。
このことを知らない経営者に責任があります。

3点セットは基本素養であり、急がば回れではありません。
これをやって、ソリューション能力を身につけ、直ちに現場で使用するというものです。

経営管理者が『ガンバロォー』と言っているとしたら、それはソリューション能力のない人間であるという認識を持たなければなりません。
ソリューション能力のある人間は、ガンバロォーなどということは一切、口にしません。

優秀な経営管理者を設置することが経営者の責務です。
それは育成から始めなければなりません。
それこそが、急がば回れなのです。

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