売り子ではなく、営業マンにするためには自分の戦略がどのような結果を導き出したのか?あるいは、導き出しつつあるのか?自分の成績がどうなっているのか?を毎月分かるようにするためには、部門別、営業所別、商品別などの『月次決算』が必要です。
資産を各部門に配分した詳細な決算ではなく、損益レベルでもいいのです。
ここが高いレベルでの経営か否かの分かれ道なのです。
ただし、その決算によってすべてが解決されるわけではありません。
営業部、商品部、商品開発部などの能力開発は別途行う必要がありますし、戦略、対策、実行などのリーダーシップ能力の養成も別途実施する必要があります。
決算とは『戦略、実現行動などを反映したものであり、戦略の優劣、実現行動の有無が視える』ということなのです。
決算によって『儲かっているのかどうかが分からない次元』から『儲かっているのが分かる次元』になったのです。
会社は部門別月次決算を行うことにより、初めて社員を一人前に扱っているということが言えるのです。経営に貢献する営業部門の財務在庫の内容を『超売れ筋』『超稼ぎ筋』に転換していくことが営業の仕事です。
このため『死に筋商品』が全くない(ほとんどないで妥協)という状態にすることが、営業部門に求められています。
会社は月末・期末在庫の多寡だけではなく、在庫内容を問うという形にすべきなのです。
これに関連して、早期に死に筋を処分していると粗利益率が向上することになります。
これも営業担当者が留意すべきことです。
一方でこのことは、商品回転数を高めることになります。
また、粗利益率の高い品群の売上高を伸ばすことによって、粗利益率が向上します。
これによってキャッシュフローを増やすことができるようになります。
高い価格を提示することが粗利益率を向上させることにはならないのです。
取引条件の悪い取引先とは、信用度が低い、手間暇がかかる、粗利益率が低い、支払期日が長いといった4悪で構成されています。
これらのうち、特に『支払期日が長い×信用度が低い』という取引先については、その改善に努力しつつ、他方で新規開拓を行い、切って捨てるという措置が必要です。
これによって、売掛金を減少させ、受取債権回転日数を改善することができます。
また、倒産による危機をも軽減することができるのです。
経営に貢献する営業部門の財務活動は
・粗利益率の向上
・回収日数の短縮
・在庫回転数の向上
などを通じて、
・キャッシュフローを増やす
・借入金(支払金利)を減らす
などの貢献を行うことです。
このような視点を持って営業管理者・営業幹部は、戦略を形成しその実現を図るようにしていくのです。
財務の知識がない社長の代わりに経営コンサルタントが説明私が駆け出しの経営コンサルタントであった30代の半ばに顧問先の社長が『これを社員に説明してほしい』と財務会計の決算書を渡されました。
①売上高の伸び率
②売上総利益の増大
③在庫の問題点
④棚卸資産回転日数
⑤自己資本比率
⑥流動比率
⑦労働分配率
⑧売掛債権の意味
⑨総資本回転率
⑩売上高営業利益率
⑪売上高経常利益率
⑫総資本経常利益率
⑬売上高対支払い利息比率
などを私はその場で計算しつつ、社員に昨年の成績と財務体質について説明しました。
これ以外に現金預金残高が多いことも示し、『借入金が少なく、ほとんど無借金経営であり、非常に優れた財務体質を持っている。今年度ももっと財務体質が強化し、無借金経営にしていこう』と締めくくりました。
本来であれば、社長自ら昨年度の成績と財務の内容について、社員に語るべきでしょう。
しかし、社長は財務諸表の分析が全くできておらず、私に依頼したのです。財務を知らない社長の社員の処遇に対する見識この夜、社長と一杯やっていると『先生のあのような説明では社員が安心してしまい、働かなくなる』とクレームがつきました。
『社長、それは違うでしょう。働くか働かないかは、個人への戦略の分配、個人への動機づけ、個人の主体的な売上予算編成、能力開発に対する意欲の喚起、正しい評価などによって決まるのであり、財務体質の良し悪しは安心して働けるという基礎になるものだと思いますよ…』と私が言うと、財務の知識はないが営業に強い社長は、一応の納得を見せていました。
次に社長が言った言葉は『業績が良いのだから、もっと基本給を上げよ、もっと賞与の支給月数を増やせと言ってこないだろうか?』ということでした。
私は『賞与は年間5か月分支払っており、社員が社員の友達などと給料の話をしていても上位の方にいると思いますから、大丈夫ですよ』と話をしました。
『それよりも業績の悪い時にも賞与をそこそこ出してあげるようにして下さい』と私が言うと、『それはできません。賞与は業績の善し悪しで決まります。しかし、基本給は能力開発と年齢というものを考慮しなければならないので、業績が悪くても上げます』と当の社長から告げられました。
私は『なるほど。これは卓見だ』と思いました。財務の知識財務・会計の知識は、上記の指標以外に
・受取勘定回転日数
・回収勘定回転日数
・支払勘定回転日数
・資本装備率
・長期固定比率
・当座比率
・損益分岐点操業度
・・・
などがあります。
これらを覚えるためには、財務分析の本を購入して、自社の決算書を参考に1週間も電卓を叩けば理解できます。
しかし、すぐに忘れる(なかなか身につかない)ので、年に一度、電卓を叩き直して身につけるようにしていただきたいと思います。
これ以外には証券化、M&A、レバレッジド・バイアウト、社債発行などについての知識も増やすようにしていただきたいと思います。
上記の社長はすでに逝去されています。
生涯、財務諸表は読めず、かつ理解できていませんでした。
財務分析ができていたら、もっと企業は成長していたかもしれないし、3億円超の本社屋は建設されていなかったかもしれません。
財務の分析ができ、分かってやるべきだと思います。
あのコーティングの会社の社長のように…
2008年秋に経営塾でこの企業を訪問します今から叙述するコーティング企業の社長から『工場見学OK』というご快諾を受けています。
私も少しは経営塾について、考え行動しているのです。
このコーティング企業には驚異の大型設備があります。
その加工のある日に訪問できたらすごいですよ。お楽しみに…。
また、社長のお話もゆっくりお聞ききできたらと思います。総資産回転率昨年12月に私はこっそりとあるコーティング企業を訪問しました。
アメリカ視察から帰って最初に訪問した企業です。
時差ボケで狂っている私の頭に『総資産回転率は0.3程度である』という言葉が飛び込んできました。
私の頭以上にここの社長は狂っているのではないかと思いました。
総資産回転率は通常1程度であり、このコーティング企業は先代から現在も過剰と思われる設備・機械への投資を続けてきたのです。
通常はこのような投資をしません。
ところが、加工業は相手任せのビジネスであり、いつ何が飛び込んでくるか分かりません。
日本でどこかのコーティング企業が
・いつ発生するか分からないコーティング
・技術的に困難なコーティング
・大きな物体に対するコーティング
を受ける必要があるのです。
このコーティング企業の社長は、上記3つのために技術開発と設備投資を営々と続けているのです。
昨年度は40%増という加工が舞い込んだが、設備があり、なんとかこなせたということでした。
このような需要急増にも耐えられる設備を保有しているのです。
そして、『2008年度は売上高が落ちます』と平気で語るのです。
それはコーティングという最終仕上げの工程を受け持つ企業として、得意先の受注動向・生産状況によって、コーティングの増減があるのは当然であるという前提に立っているのです。
どこかがコーティングをしなければならない。
日本のために当社が技術開発、設備投資を行い、それを受けるようにしていこうという使命感が総資産回転率0.3という設備過剰の投資の理由になっているのです。
これは悪いことなのでしょうか?
高度な技術が必要とされるコーティング、トレーラーを想起してもらえば分かるが、大きな物体に対するコーティング、需要が一時的に急増した場合のコーティングなどは社会的性格を帯びたものです。これは最早、日本経済のために投資をしているというべきなのです。
このコーティング企業は、昨期、未曾有の業績を上げていらっしゃいます。
それは需要急増に対応できる設備を保有していたからです。
このコーティング企業が多大な設備投資をしていたから、日本の製品が何とかできたということになるのです。
財務・会計からは、総資産回転率0.3などという設備投資は許容されません。
しかし、社長の使命感がそれをなさしめているのです。一度だけ仕事を断ったことがあるコーティングが必要な商品にはコーティングが必要です。
逆に言うと、コーティングしないと商品にならないのです。
このため、コーティングについて仕事をお断りするということはありえないことです。
しかし、一度だけ仕事を断ったことがあるという話を社長がしてくださいました。
コーティング依頼者は
・大きなメーカーである
・人を見下している
・価格の提示が常識を超えている
・問答無用、やれという態度である
・社員の人格を損なう
というものでした。
このため、社長は決然と受注を断わったのです。
これは私の推測であるが、大企業の担当者が社員の人格を損なうようなアプローチを許すことができなかったと思われます。
財務・会計には、社員の人格への配慮という概念はありません。
経済合理性だけで企業経営が行われているわけではないのです。
減価償却と企業の成長減価償却の対象となるのは10万円以上の設備、機器、システム、その他ツールなどです。
これらは資産台帳に計上され、管理されることになります。
この減価償却が企業の成長を表しているのですが、それは
・新しい機械の導入
・新しい工具の購入
・新しい工場の建設
・新しい設備の設置
・新しいシステムの導入
などの形になって現れます。
これらの投資は将来の企業成長を可能とするものであり、積極的な経費となるものです。
3カ年経営計画の中に設備、機械、工具などの投資計画が載っていると、製造部、技術開発部、商品開発部などは奮い立つという側面も有しているのです。キャッシュフロー経営可能な限りリースによる上記の設備、機械、機器などの導入をやめて、購入に切り替えるべきです。
そして、減価償却によるキャッシュフローを獲得し、それに基づいて、さらに設備投資を行うようにするべきです。
リースか投資かという質問をよく受けますが、基本は投資です。
分野によっては…例えば、車両は故障、事故、保険…などがワンセットになっていて、付帯業務の軽減が享受できる場合があります。
このような場合はリースが有利です。
機械・設備は償却後も継続している場合が多く、社員に愛着があります。
機械の癖もご機嫌の善し悪しも知っている社員が多いのです。
このことからも自社の設備・機械であれば、愛着の度合が違うのです。