財務の知識を生かすある企業は財務の知識・スキルによって企業を延命させています。
それは『資金調達が特段に上手である』ということに尽きます。
現在も継続して第三者割当を行っています。
この企業は当初のビジネスモデルの持つ成長性を食い尽くし、3億円を超える大赤字に転落しました。
企業規模は大きくなく、通常であれば倒産していたと思われますが、現在も生き延びています。
それもそのはず、赤字に転落した時に30億円を超える資金を社債発行で確保していたのです。
そして企業経営は長期低落の中にあります。
しかし、大義名分があれば資金調達は可能なのです。
大義名分は架空の戦略を作り出せば、何とでもなるのです。
財務の知識があったが故に赤字を見越し資金調達に走ったのです。
この企業は売上確保の1つの方法として他社への投資をそっくりそのまま自社への発注に切り替えさせるという形で売上高を稼いでいます。
これも財務の知識によるものなのでしょうか?まっとうな経営財務の知識で新たなビジネス、商品、サービスを開発することはできません。
それは『市場機会×商品・ビジネス・サービス』という思考によってもたらされるものであり、『マーケティング全体』のスキルが必要とされます。
商品・事業・サービスは
・新規性・独創性
・競争優位性
・オンリーワン
・収益性
・拡張性・成長性
・市場性
の6項目によって創出され評価されます。
オンリーワンでなくても、商品・事業・サービスは成立しますが、他の5項目を具備していない場合は進出すべきではありません。
このような姿勢を持たずに、ともかく資金調達を行うということは言語道断のことです。
それでも投資する人が一部に存在しています。
それは勉強不足に尽きます。投資側の評価は財務の知識ではないここで投資側にとって重要なことは、
・現在の業績
・現在のビジネスモデル(収益構造)
・増資目的
・現在のビジネスの可能性・将来性
・新たにやろうとしているビジネスの評価
などです。
投資側の評価基準、評価項目は財務の知識ではありません。
企業評価・経営評価、経営者の能力評価、経営者の筋目の評価などになります。
財務の知識は資金調達、節税、金融商品の理解(金融商品に対する評価ではないことに留意)、決算、管理会計による視える化などへと展開されることになります。
むしろ、視える化なくして経営はできません。
『財務の知識だけでは経営はできない』という限界を明確にしておくことが求められます。
『当社の製造や営業は財務を知らない。あいつらは馬鹿だ』といったことは、口が裂けても言ってはなりません。
製造や営業が財務を知らないのは、私の責任であると捉え『経営に貢献する営業部門の財務』『経営に貢献する製造部門の財務』といった『ノウハウ』を開発するような財務スタッフであって欲しいものです。
また、市場の変化・動向を掴み、経営に貢献する財務部門であってほしいものです。
財務の限界事例は、ニッチもサッチもいかなくなった小売業です。
・業態はミニスーパーである
・商圏は3,000人程度と小さい
・20,000人程度の隣町に1,000坪規模のスーパー・スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどがある
・同一商圏にコンビニエンスストア、小規模なスーパーマーケットがある
・買い物の流れは大きなスーパー・スーパーマーケット、便利なコンビニエンスストアなどに移動している
・業績は売上高が30%、粗利益率が10%と共にここ数年間で急落している
・売上高、粗利益率とも下げ止まっていない
・家内経営で人件費は極めて少額である
・パートは1人も雇用していない
・小売業としての固有技術・知識のレベルは低い
・実質は赤字である
・借入金は9,000万円
・借入金の金利支払いを優先させているが、元金の返済はままならない
・遊休不動産が店舗の右側に40坪程度ある。ここに社員や顧客が車を止めている。しかし、駐車場は店舗の左側に設置されている
・店舗の裏側に社員用の駐車場があるが、顧客用にも5台程度使用できる
・家族には極少額の手当を支払っている以外は給与を支払っていない
・経営に携わる2人の人間の給与を返上するという手段は残されている
以上のような状態の小売企業が3,000万円の資金を身内から手当てができることになったとしましょう。
皆さんならこの3000万円をどのように使いますか?財務だけの知識では戦略は出てこない上記のような状態の場合、まず経営者の能力、感度、行動力を質問によって量り、何ができるのかということ、つまりどのような戦略が採用できるかを認識する必要があります。
さらに、現状分析として
・急激な売上高と粗利益減を招来した競合関係
・上と関連して、現在の業態の脆弱性
・商圏内の顧客の買い物動向
・店舗立地
・店舗の配置・駐車場の位置・台数
・使用できる不動産
などを理解する必要があります。
そして、肝心なことは現地に飛び、その店舗の置かれている現実と現物を視ることです。
現地、現場、現実を確認せずに結論を出すことはできません。
ましてや、経営者の能力・見識も『現実』なのです。
私は現場に飛び、かつ、本人の経営能力を判断し
・コンビニエンスストアを併設する
・コンビニエンスストアと既存のミニスーパーとの壁を取り除く
・コンビニエンスストアの品揃えを受け入れ、そこにないカテゴリー(オリジナル惣菜、生麺、青果、精肉、鮮魚、塩干など)を導入する
・レジを別々にせずに、1カ所にすることをコンビニエンスストアと話し合う
・自身が店舗に張り付いて商売を覚える
・身内からの資金は毎月返済する
というような結論を出しました。
さらに、想定損益計算書を作成しコンビニエンスストアを併設することによって、黒字になることを明確にしました。相談に乗る側に求められる知識・スキル上記の事例に対して経営相談に乗る場合に必要とされる知識・スキルは
・小売業態に対する知識
・競合に関する知識
・市場の分析能力
・商品カテゴリーに対する知識
・店舗づくり・店舗開発
・品揃えに対する知識
・店舗のオペレーションに関する知識
・本人の能力水準
・財務の知識
などです。
一般的な話として経営相談に乗るためには、経営戦略、マーケティング、商品開発、市場機会、マーチャンダイジング、人事労務、営業、製造、品質管理、ブランド戦略、法令、補助金などに関する幅広い知識×スキルが必要とされます。
また、案件に対する分析が必要とされます。
そのため、私は安易に経営相談に乗るなどという大それたことはできません。
一般に経営相談は簡単に行われています。
しかし、それは経営相談ではなく単なる経営に関する『お話合い』にしかすぎないのです。
この場合もそうですが、財務の知識からは『借入金の返済』という<解>しか出てこないでしょう。
経営能力の中に占める財務の知識の役割は小さいことを理解しておくことが求められます。
より重要なことは、財務の限界を認識することであり、活路を開くのはこの事例のように市場、マーケティング、経営戦略、業態などの知識・スキルであることを知ることです。
売上高と行動・戦略売上高の獲得にあたって、
・どこが優れていたのか?
・どこが劣っていたのか?
・何が上手なのか?
・何がつたないのか?
・何が充実しているのか?
・何が欠落しているのか?
・取りこぼしたのは何なのか?
・どのような商品があればよいのか?
といった点を社長が点検することが求められています。複眼的経営戦略形成私は『社長の数だけ、戦略形成法がある』と思います。
多くの経営者はポーター、ハメル、プラハラッド、コリンズ、野中郁次郎などの著書を読んでいません。
また、読んでいたとしても理解し、フレームワークで戦略を形成しているかというと疑問があります。
それでも、経営者は戦略を形成し、社員に提示しています。
この一人一人の経営者が保有する戦略形成のフレームワーク、思考方法に私は重大な関心を抱いています。
上記のように『どこが優れていたのか?』『どこが劣っていたのか?』『何が上手なのか?』『何がつたないのか?』『何が充実しているのか?』『何が欠落しているのか?』『取りこぼしたのは何なのか?』『どのような商品があればよいのか?』という『売上高に関する社長の反省』からも来期の経営戦略は出てきます。
上記の反省は、オリジナル性を持ち、自社に最もマッチングした優れた戦略形成のフレームワークなのです。財務・会計の常識に疑問を持つ財務の専門家は経営者よりも知識の範囲が狭いのです。
経営者は、
・戦略
・市場
・商品開発
・人事労務
・営業
・製造
などの知識だけではなくスキルも持ち合わせています。
財務の専門家に対して、逆に『売上高の持つ意味は何でしょう?』と問うた場合、何も答えられません。
財務分析といいますと総資本回転率、売掛債権回転日数…というように全てが数値化され、かつ、財務の範囲でしか分析がなされていません。
この点に大きな疑問を持ち、軽視されている売上高を行動・戦略と絡めて分析を行います。
このように、経営者の財務論は行動・戦略が浮き彫りになる数値化されないものが、むしろ必要とされているのではないでしょうか?
財務からの分析ではいかに間違った結論が出るかを次号で検証してみましょう。
売上高の意味『当社の昨年度の売上高は○○億○千万円であり、昨年対比4.3%の伸び率でした。業界の需要はマイナスであり、この中で売上高が伸びたということは、当社は比較的順調に推移していると思われます。次いで、期末在庫高は…』
というようにしか売上高について述べることができない社長は能力も感謝の念も何もない無能力者です。
少なくとも社長であれば、この売上高を獲得するために
・いくつの見積があったのか?
・どれだけの訪問があったのか?
・商売・提案はいくつあったのか?
・成約数はいくつで、成約率は何%だったのか?
・クレームはいくつあったのか?
・クレームに対する恒久措置はどれだけ取れたのか?
・新規開拓数はいくつあったのか?
・失った得意先はいくつあったのか?
・OEM新規はいくつあったのか?
・新商品の売上高に占める割合はどれくらいあったのか?
・市場での評価・評判はどのようなものなのか?
・重点販売商品の売上高
・品群別の売上高
・当社のバリューチェーンは優れているのだろうか?
といったことが走馬灯のように思い浮かぶのが普通です。
そして社員(営業部の仕事だけが売上高を獲得しているわけではありません)に感謝し、かつ、教育・能力開発の重要性を再認識することが求められています。
『当社の営業力は強いのだろうか?』『優れた管理者を配置することが会社の責務であるが、営業管理者は優れているのだろうか?』売上高はなぜ獲得できたのか?売上高の獲得については、
・市場における自社の地位
・保有する商品の消長
・チャネルの消長
・得意先の消長
・ブランド戦略の効果
・営業担当者の活動・活躍
・新商品の効果
・商売・提案の方法
・価格政策
・市場の変化=ニーズ=使用場面に対する対応
・バリューチェーン全体の高度化
などによってもたらされたものなのです。財務分析と売上高多くの税理士、財務の専門家は、財務分析から『売上高』を排除しています。
経営者の中にも売上高について、冒頭に述べた程度の認識しかない人がいます。
現在の売上高が企業の実力であり市場での地位です。
ここから『想いを馳せる』ということが重要なのです。
財務分析とは『数値の割出し』ではなく、『行動』『行動次元』『戦略』などを明確にしていくものであるという認識が要求されるのです。
それが『経営者のための財務論』なのです。
1.知らないのに『ブルー・オーシャン戦略』になっていた理由
既存の企業が『ブルー・オーシャン戦略』に気付いた理由をその後も考え続けています。
競争の外に出る、競争のない製品・サービス・ビジネスを獲得するということであり、多くの企業、プロジェクト、個人がこれを追い求めていました。
そして、多くの企業、プロジェクト、個人がW・チャン・キム等の示した事例にあるように『ブルー・オーシャン戦略』を獲得しているのです。
W・チャン・キム等の提案したフレームワークの一部は、既存の製品・サービス・ビジネスに対して『減らす』『増やす』『排除する・なくしてしまう』『加える』という4要素で発想して、抜本的な見直し、一からの創造を行うというものでした。
これを造語すると、『増・減・排・加』という切り口です。
『増・減・排・加』という切り口は、新しい要素を盛り込む、思い切って不要な要素を減らす、もっと思い切って不要な要素をなくしてしまう、新しい要素を加えるというものです。
このような発想は、既存のマーケティング・マーチャンダイジングの展開でも古くから行われています。
ただし、この4点に絞って発想していたということはありません。
我々は、製品・サービス・ビジネスを開発したり見直したりする場合に、
①この点を差別化できないか?・・・・・・・・・・・『増・減・排・加』
②もっと他に、何か、良い方法はないか?・・・・・・『加』
③違う市場はないか?・・・・・・・・・・・・・・・『加』
④他社の製品・サービス・ビジネスがもっていない要素は何か?・・・『加』
⑤思い切って、製品の仕様を変えてみたら、どうなるか?・・・・・・『増・減・排・加』
⑥顧客の強いニーズはどこにあるか?・・・・・・・・・『増・減・排・加』
⑦素材、材料を変更してはどうか?・・・・・・・・・・『増・減・排・加』
⑧製品・サービス・ビジネスの顧客ターゲットを設定しなおそう・・・『増・減・排・加』
といった発想を行っています。
これらの発想を行い、製品・サービス・ビジネスを開発した場合、『増・減・排・加』という要素を持っているのです。
2.使えるフレームワークにするのが実務家の仕事
『増・減・排・加』の切り口は、直ちに『ブルー・オーシャン戦略』に辿りつける魔法の発想法ではありません。
ここから多くのアイデアを出し、新しい製品・サービス・ビジネスを創造していくことが求められています。
『ブルー・オーシャン戦略』に書かれている『木を見ずに森を見る』といった類の叙述は、能力のある実務家からすると分かりきっていることであり書くべきことではないと思います。
こんなことを書いて、本のページ数を増やすなよということになるのです。
そうではなく、『ブルー・オーシャン戦略』に辿りつけるように、せっかくの提案である『増・減・排・加』という考え方を単なる切り口ではなく、もっと高次元のフレームワークにするべきなのです。
ここをもっと書けよということです。
それも本当にノウハウが確立されているのならば…ということです。
経営コンサルタントという職業についているものは、たった一行しか書かれていないことであって、それが正しくかつ効果があるものであると判断した場合は、それを現場で使用できるフレームワークにまで仕立て上げていくことを行うことです。
その好例は『業務を抜本的に変える』というリエンジニアリングに見られます。
リエンジニアリングの本には『抜本的に変える』としか書かれていません。
ここから、経営コンサルタントは当該企業の現場において、業務改革ができる論理≒フレームワークを組み立てているのです。
3.4月13日の経営塾が楽しみである(注)
明日、『ブルー・オーシャン戦略』のフレームワークについて経営塾でさらに討議を続けます。
ここでは『知的誠実性』に基づいて、真剣な討議が続きます。
経営塾で開発された『ブルー・オーシャン戦略への道』というフレームワークは経営塾参加者全員による『知的所産』です。
このため、この知的所有権は参加者全員のものとなり、他に流失させることはできません。
『ブルー・オーシャン戦略』については、10号程度の『苦言・迷言・提言』をお送りしました。
これで『ブルー・オーシャン戦略』についての『苦言・迷言・提言』での叙述は終了します。
わりかし真面目にやっているのが、通称『服部経営塾』、正式には『日本的経営創造学会』です。
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(注)学習会は2007年に開催されており、2008年に開催の予定はございません。