ナレッジとはいわゆる知識でありません。
ナレッジとはスキル、ノウハウ、技術などを表しています。
これは野中郁次郎の提唱するものであり、『SECI・セキ』と短縮して用いられています。
<表出化> → <連結化>
↑ ↓
<共同化> ← <内面化>
『表出化』とは体内に宿っている暗黙知を形式知に変換することをいいます。
この場合、言葉、図、数字を用い、時にはビデオ、写真などを援用する場合もあります。
『連結化』とは表出された形式知に形式知を組み合わせたり、融合させたりすることをいいます。
これは形式知を用いて報告書、企画書などを作成することを表しています。
『内面化』とは形式知を再び、暗黙知へと変換することを表しています。
資料化された内容を実行し、新たな次元の高い暗黙知として体内化することになります。
さらに、暗黙知と暗黙知を融合させるプロセスを『共同化』といいます。
これは共通の体験から暗黙知を獲得・伝達しあうことになります。
これ以外にも『形式知×暗黙知=形式知』というプロセスもあるように思われます。
それは本、論文、マニュアルなどを読み進んでいると様々なアイデアが湧出され、
新しい形式知が創造されることを指しています。
この『知識創造スパイラル』を各個人がモノにすることが求められています。
企業経営の現場では、よく『情報の共有化』が言われています。
しかし、その情報の活かし方は個人に委ねられていて、
その後どのように活用されたか、捨てられたか、忘れられたかは分かりません。
『情報の共有化』と『知識創造スパイラル』は異次元のモノであるという認識が必要です。
情報が形式知化されたものであれば、
個人の保有する暗黙知を掛け算し、新しい形式知ないしは暗黙知にしていくことが求められています。
単に情報を聞き流している人とそれを新たな形式知にしたり、
より次元の高い暗黙知に昇華させた人が成長しているのです。
『知識創造スパイラル』を回すことができず、
ここで多くの中小企業が頓挫することになります。
それは『形式知=文章化』ができないことに理由があるのです。
文章は考えがまとまれば書けます。
考えがまとまらなければ、文章は書けないのです。
喋っていることをそのまま文章にすればよいのです。
あるいは、暗黙知を一つ一つの要素に分解して箇条書きで書き出すようにしてもよいのではないでしょうか。
何としても、『形式知』が必要なのです。
なぜなら、『形式知』にすると学ぶことができるからです。
『真似べ』という言葉があるが、これは最も進歩・成長が遅い方法である。
形式知化してナレッジライブラリィに置くべき項目は
①各種提案書
②各種見積り書
③各種企画書
④マニュアル
⑤各種フォーマット
⑥テキスト
⑦諸規定
⑧販売方法に関する各種スキル、ノウハウ
⑨製造方法に関する各種スキル、ノウハウ
⑩文書実務
⑪決算書の読み方・見方・分析法
⑫ミッション・スティツメント
⑬ビジョン、ドメイン、中期経営計画、今年度経営戦略
⑭システム活用法
⑮品質管理の方法
⑯会社スケジュール
などがあります。
『学習する組織』によってどのような効果を期待しているのでしょうか?
それが過度になってもいけないし、過少であってもいけません。
『正しい期待』を持つことです。
私が『学習する組織』の導入の支援をしている企業の社長と昼食時にお会いした時に、
『社員の目の色が変わってきています』と言われました。
何が目の色を変えた理由になっているのかを明確にすることが、
正しい期待につながるのではないかと思います。
『学習する組織』の効果について営業部門を事例にすると、
次のような期待をすることは許容されると思われます。
①自身で営業戦略を確立する
②リピート、クリエイト、新規開拓、OEM(プライベートブランド商品)などを正しく捉える
③自身で、売上・利益予算を確立できる
④商品開発に関する能力を身につけることができる
⑤市場の変化を読み取れる
⑥顧客管理・キーマンとの関係づくりができるようになる
⑦新規開拓は当然実行すべきものであると捉える
⑧ナレッジライブラリィ☆を活用して、仕事が正確、かつ迅速で、レベルの高いものになる
⑨ナレッジライブラリィに搭載するスキル・ノウハウを自身でつくる
⑩暗黙知を形式知化する
⑪インターネットで必要な情報を集めようとする
⑫本格的な調査が必要な項目を自身で割り出し、会社に調査依頼をしてくる
⑬販売可能な関連業界を調査し出す
⑭管理フォーマットを自身で設計する
⑮訪問時・商談時の商売・提案の数が増える
⑯提案営業などという抽象的なことはいわなくなり、ソリューション営業、ニーズ喚起営業、プロデュース営業、価格パフォーマンス営業などを展開する
このような変化が『学習する組織』には見られるのです。
私の経験から申し上げますと、
『学習する組織』の特徴は、他のいかなる経営手法よりも成長が早く、かつ能力開発の範囲が広いのです。
つまり、高度で幅広い専門性が取得され能力開発と業績向上が同時にもたらされるのです。
この程度のことは会社として期待してもよいと思われます。
ここで新たな課題が発生します。
それは前号で述べた人事制度です。
学習する社員が成果を上げた場合に会社としてどのような人事制度で対応するかということです。
『おっ、頑張っているのだな』だけでは継続的な学習を奨励する措置にはなりません。
やはり、前号で紹介したように倉重の提案にあった『人事プラットフォーム』と『学習する組織』のリンクが必要となってくるのです。
チームワーク、組織への貢献などという分野は『誘導項目』です。
放置しておけば自己の専門性、自己の能力開発だけになってしまうものに
会社として必要な方向を与えることが大切なのです。
人事制度の評価項目として設定され、かつ極めて重視されている必要があります。
また、ナレッジライブラリィという用語が出現していますが、
これはナレッジのプラットフォームの一部を構成するものです。
この準備も会社として考える必要のある重要なものなのです。
パソコン1人1台体制とパソコンで文章が書け、数値を処理できる能力が必要とされます。
中小企業において、『学習する組織』の導入の阻害要因としてパソコンの問題が依然として存在しているのです。
『学習する組織』の導入にあたり述べてきたことを整理すると
①学びの多様化
②学びの場の設定
③業績向上のプログラムの明示
④人事制度の改革
⑤パソコン
⑥ナレッジライブラリィの設置
⑦学習する組織を構築する経営者の強い意思
ということが最低限の準備項目として設定されることになります。
仕事に意義を見出した場合、人は意欲的に学習をします。
もっと仕事をおもしろくしてあげることが大切だと思うのですが・・・
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☆ ナレッジのプラットフォームの1つで、ナレッジを集約し体系化して整理したもの。必ずしもIT化をはかる必要はない。パソコンのデスクトップ上のフォルダーで管理が可能である。
『学習には一定の強制が必要である』と述べたのはシャインです。
倉重英樹は、
『知的モチベーションを喚起し奨励するメカニズム、その成果を集積してシナジーを生み出し活用するメカニズムを適切に設計できれば、社員の能動的な学習を促し、そこで得られた知識や能力を組織能力へと昇華できるはずである』と提案しています。
倉重は
①知的モチベーションを喚起・奨励するメカニズム
②知識を集積しシナジーを生み出す
③知識を活用するメカニズムの設計
を行なえば社員の能動的な学習を促すことができると説いているのです。
ここに学習する組織のポイントがあります。
それは『社員の知的モチベーションを喚起できるメカニズムを作り出す』ということです。
これができれば、社員が学習をすることは確かです。
倉重は自社(IBMビジネスコンサルティングサービス)を事例に挙げて説明をしています。
例えば、人事系プラットフォームの再構築が必要であるとして
①個人強み(能力)を公正に評価する
②強みを伸ばすための学習機会を提供する
③ビジネスも学習も一定のルールの下で自由裁量に委ねる
④業績の評価項目・基準をオープンにする
⑤チームや部門といった組織への貢献度を重視する☆
という5項目を挙げています。
また、『組織は目的達成と能力開発を同時に実現させるツールと考えられる』として
マトリックス組織を編成しています。
さらに、アライドシグナルの事例を引いて
『現場で学習できる仕組みをデザインすることに力点を置いた。すなわち、継続的学習を奨励する『プラットフォーム』を構築することに焦点を絞ったのである』
と継続的学習を奨励するプラットフォームに言及しています。
倉重のこの提案は極めて優れたものです。
しかし、多くの中小企業には適用できません。
なぜなら、
①人事系プラットフォームが能力主義、学習奨励型になっていない
②顧客志向の組織になっていない
③ジョブローテーションなどが敷かれておらず、様々な経験を通じて、能力開発を可能とする組織になっていない
④ナレッジ・マネジメントの整備ができていない
⑤革新を行なっている社員がいない
といったようにないないづくめになっているからです。
そうなると中小企業に学習する組織は導入・確立できないではないかという結論になってしまいます。
だから、どうするかということなのです。
ここからが知恵の出しどころなのです。
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☆ ハーバード・ビジネス・レビュー 2003年3月号
シャインによる学習の困難性を理解した上で、今度は逆に能動的に学ぶ話を展開しましょう。
東京工業大学の今田高俊は
『外部環境に適応するだけではなく、自ら変化する力を見逃すわけにはいきません。前者は受動的な変化であり、『第二級の適応』です。後者の『第一級の変化』は、自らの意思で能動的に変化する自己適応です☆』と述べています。
外部環境の変化に対応して自身が変化することは、
『第二級の適応』だとして低い位置しか与えていないのです。
そして、自らの意思で能動的に変化することを『自己適応』と呼び、高い評価を与えているのです。
この『自己適応』とは自己を新たに組織化することを表しており、
『自己組織化』に通じることになります。
今田は『自己組織化とはシステムが環境との相互作用を営みつつ、自らの手で自らの構造をつくり変えていく性質を総称する概念です』『変革の原因を自己の内に持つ『内破による変化』のことです』と述べています。
『内破による自己組織化』というものを確立できた人は、
革新を続けられるということになります。
内破の衝動、動機は、どこから来るのでしょうか?
こうなると私の能力を超えた問題になってしまいます。
ヒントは意識改革とは
・将来の環境の変化を予測し
・変化した環境をイメージし
・それに対応できる自己の姿を描き
・描かれた自己像を実現するために学習する
ということです。
このことから意識改革は少数の優れた人しかできないことなのです。
多くの人は、プロジェクト、タスクフォース、リエンジニアリング、TQM、商品開発、業態開発などに関わりあいをもつ中でなだらかに意識が改革されていくことになるのです。
それは能力開発が伴っており、自己の仕事観、人生観、常識が変化することによって行われていくと考えるべきです。
課題があり、必要な知識を習得し、新たなスキルを磨くという行動があり、
それが能力開発につながった時に人は意識が変化していることを知らないまま変化していることが多いのではないかということです。
私のような凡人は、意識改革や内破による自己組織化などができようはずがありません。
常にクライアントの抱える問題に対応しており、せいぜい第二級の『受動的な変化』ができている程度にしかすぎません。
ここで私の事例を引いたのは、皆さんの会社の組織状態を皆さんが診断する必要があるからです。
社内の状況を見てください。
①どこかの部門で、業務の改革・革新の行動が行なわれていますか?
②新技術の取得に、営々と取り組んでいる社員がいますか?
③市場開発のために調査を行ない、新規チャネル、新規得意先の開発に努力している社員がいますか?
④業務改革に取り組んでいる社員がいますか?
⑤自分の仕事のスキルを高め、ノウハウとして確立し、それを後輩に教えている社員がいますか?
伸びる芽を発見し支援することが、学習する組織づくりの第一歩であるのです。
何もしていないマンネリに陥っている社員に目を転じてみてください。
問われているのは、経営者・経営幹部としてどうするかということです。
学習する組織の本を読み、
それを自社の組織状況も判断せずに杓子定規に導入することには無理があります。
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☆ 東京工業大学教授 今田高俊 『学習する組織のマネジメント』ハーバード・ビジネス・レビュー 2003年3月号
私達、経営コンサルタントは、学者、シンクタンクとは違う学習方法を採用しています。
例えば、学習する組織を事例に取り上げますと
①現場で使えるか
②企業経営に効果があるか
③企業経営に必要なものか
④ブームで終わるのではなく、定着させられるものか、定着させてよいものなのか
⑤経営手法なのか、経営資源になるものなのか
といったことを考えながら『経営改革手法』の学習を進めています。
このため、単に学習だけで終わるものもたくさんあります。
企業の現場に持ち込んでよいものとそうでないものとを厳しく判定しているのです。
なぜなら、企業経営の現場に持ち込める『経営改革手法』は、ほとんどの場合1つであるからです。
また、その導入に際する学習に大きな時間と努力が必要とされるからです。
例えば、『リエンジニアリング』『営業改革プログラム』『単品管理』という3つを同時に、1つの現場に持ち込むことができないのです。
経営手法には
①リエンジニアリング
②ベンチマーキング
③TQM
④単品管理によるPOSマーチャンダイジング
⑤在庫コントロール
⑥リストラクチュアリング
⑦予算編成制度と目標管理プログラム
⑧中期経営計画
⑨営業改革プログラム
⑩商品開発プログラム
⑪バランスド・スコアカード(BSC)
⑫戦略的情報システム(SIS)
⑬製販一体型組織改革プログラム
⑭学習する組織による改革プログラム
⑮製造部改革プログラム
⑯収益増プログラム
などのノウハウ・スキルがあります。
これらの経営手法を経営コンサルタントは自己内部での学習を通じて確立し、
かつ、形式知としてノウハウにまで高めておく必要があるのです。
ところが、中小企業診断士資格を取得した人には、
上に述べたようなノウハウが確立されていないのです。
ですから、経営コンサルテーションが受注以前に非常に困難になります。
それはさておき、本題に話を戻します。
リエンジニアリングは使える経営手法である。
ベンチマーキングも使用できる。SISは使用できない。
在庫コントロール、収益増プログラムは単品管理を行ない、
プロフィットセンターごとの月次決算を行なっている企業では使用できる。
BSCもプロフィットセンターごとに月次決算を行なっている会社にしか適用できない。
それも、一つの大きな仕組みであり、導入・定着までに3年間は要するのではないか?
その労力を考えると、中期経営計画の導入、製販一体型組織の導入など他のプログラムの方がよいのではないか?
SISをはじめとして、流通業のTQMなど多くの経営手法がブームのまま終わっています。
例えば、流通業にTQMを持ち込んだのは山口裕先生です。
私は原稿完成間近な時に山口先生の本が刊行されたのを見て愕然としたのを覚えています。
世の中は広い、僕より先に気付いた人がいたのだということでした。
山口先生に遅れること3ヶ月で私の本が刊行されました。
そして、流通業にTQMブームが起きたのです。
この時、私は『これはブームだ。流通業の現場にTQMを定着させることは困難である。それよりも、流通業が真に欲しがっているものは何か。真に役立つものは何か』と考え、POSマーチャンダイジングの学習を始めたのです。
そして、流通業はやはりTQMではなく、単品管理、品切れ防止、売れ筋追求、死に筋排除、業態開発、売場基本レイアウト、棚割り、価格政策、商品政策、鮮度管理、立地創造、出店戦略、店舗のスクラップ、週間販売計画、チェーンオペレーションなどをキチンとやった方がよいという結論に至ったのです。
これを『小売業改革プログラム』として確立する必要に迫られたのです。
国内だけではなく、アメリカの流通業を視察し必死で学習をしたのです。
このノウハウを現場の社員の皆さんに学習してもらい、
能力開発と業績向上に寄与することが経営コンサルタントには求められているのです。
しかし、当時、私が完全なノウハウを確立して現場に入り込んでいたわけではありません。
ところどころに完全でない箇所があるのです。
つまり、基本的にはできているのだが、細部にわたっては完成していないノウハウであるということです。
ですから、現場の皆さんと一緒に汗をかきながら、人知れず、大量の冷や汗をかいていたというのが事実なのです。
このように経営コンサルタントは、現場に持ち込めるのは1つであるという視点に立つことが重要です。
小売業の現場にQCサークル活動を持ち込むと、それで現場は動いてしまうのです。
他のことがほとんどできなくなるのです。
ここで、また知恵が働きます。
QCサークル活動ではなく『QC的問題解決手法』というものを持ち込むと、
在庫コントロール、死に筋退治、フェイス数の設定、売場の隙間の解消、効果的なPOPの作成、副通路へのスポッターによる顧客誘導、利益増などに応用して、伸びやかな改革・革新をしてもらえるようになるのです。
つまり、考えを発展させて、現場で使えるように工夫をするということです。
学習する組織は、効果的に学習することが求められています。
それは、完成された経営改革手法を自社にカスタマイズする形で学習するということです。
ここに経営コンサルタントを活用する場面があるのです。
学ぼうとしない人に対して
・『怠惰』
・『女房子供がいるのに、何をしているのだ』
・『しっかりせよ』
・『社会に通用しなくなるぞ』
・『後輩に追い抜かれるぞ』
などという言葉をいくら投げつけても無駄である可能性が高いのです。
人が学習をしない理由として、
『学習不安』と『生存不安』の2種類があるとエドガーH.シャインは述べています。
学習には過去の価値観との決別を迫られます。
学習そのものに困難性があり、また学習内容に対して疑問を感じることもあります。
これらを総称して『学習不安』といいます。
『生存不安』とは、『学ばないと社会の中で生きていけないという追い詰められている状態』を指しています。
『基本的には生存不安が学習不安より大きい時、初めて学習が生まれます』とシャインは指摘しています。
しかし、『生存不安』をものともしない退職があります。
多くの企業で経営に関する改革・革新を提案し実行段階に入ると退社を申し出る人達がいます。
それは改革・革新に伴う『転換的学習』を組織に強いることになったからです。
シャインは『体系的なアプローチで組織文化に介入し、組織全体に転換的学習を浸透させる術は未解決のままです☆』と述べています。
『転換的学習』は
①既存の思考・行動を抜本的に変革する
②一旦、習得し、身についた仕事の方法を変える
③今までの価値観を捨てる
ということを意味しています。
さらに、これらについて仕事の新しい方法、価値観などを身につけることを表しています。
このため、『転換的学習』には非常な困難が伴うことになるのです。
ここで思い起こしていただきたいことは、
今までに会社が改革・革新を提案した時の社員の態度です。
改革・革新を提案した場合に社員のとる態度は
①退社
②サボタージュ
③模様眺め・参加のふり
④消極的参加
⑤積極的参加
などに分かれたはずです。
私はリエンジニアリング(リストラではなく業務プロセスを抜本的に変革すること)の指導経験が20社程度あります。
会社が改革・革新を提案すると、必ずといってよいほど退職者が出ました。
それも決まって管理者に出てくるのです。
それは、『転換的学習』を本能的に嫌悪する。
つまり、すでに身についたスキル・ノウハウ・技術で、他社でも飯が食えないかという発想をしているのだと思われます。
だから、退社していくのです。
読者の中にも、なるほどと思われる方が何人もおられると思います。
ある小売業の専務が、店長に対して売場基本レイアウト、品揃えなどを改革するための会議日を設定したら、店長から辞表が出てきたという事例があります。
社長がISO取得を宣言し行動を開始したら、管理者が次々と退職していったという事例もあります。
これらは『転換的学習』を拒否する挙に出たということになるのです。
学習する組織の導入に当っては、
『学習不安』『転換的学習への不安』などが存在するということをまず、
しっかりと会社として認識していただきたいのです。
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☆ 『学習する組織のマネジメント』ハーバード・ビジネス・レビュー 2003年3月号
『業績向上の長期的プログラム』から社員に求められる能力課題が
①経営戦略の理解
②経営戦略の受け止め
③事業部、部・課の戦略形成への参加
④戦略の大きさの推量
⑤部門経営能力
⑥分配された戦略のソリューション能力
⑦自己管理能力
⑧予算編成能力
というように明確に割り出されるのです。
これらを『基本学習課題』と命名しています。
これら以外に『職務上学習課題』『特命学習課題』『個人的学習課題』などがあります。
『職務上学習課題』とは
①財務、営業、技術、製造、流通、開発、設計などにおける高度な専門的知識、スキル、ノウハウの習得
②マネジメント能力
③部門戦略形成能力
④以上に必要な文章化、プレゼンテーション、コミュニケーション(伝達、理解させる・する能力)、暗黙知の形式知化能力
⑤予算編成能力(ここに入れてもよい)
などを指しています。
『特命学習課題』とは
①プロジェクト、タスクフォース
②リエンジニアリング
③ベンチマーキング
④各種調査
⑤商品開発
などにかかわる能力開発を指しています。
これは、定常業務ではなく会社から任命されて行なうことになります。
ここから特命という命名を行なっています。
『個人的学習課題』とは
①自己の弱点補強
②自己の強みのさらなる強化・育成
③メンタル面、対人折衝能力
などが該当します。
さて、どうすれば学習する組織が構築されることになるのでしょうか?
今号では、『学習課題の分類』を試みてみました。
学会では、このような分類が行なわれていないと思います。
このような簡単なことが、世界初の分類になるのです。
経営コンサルタントが本気になって研究を始めると
学者諸氏とは違う切り口で展開することが可能になってきます。
生きた素材が目の前にあり、それと真摯に格闘することが求められており、知的誠実性の最大限の発揮を必要とされているからです。
『学習する組織』とは自らを進化させる組織です。
『学習する組織!そのようなものは議論するまでもないことだ。ともかく、勉強させればよいのだろう。簡単なことだ』と思うのは間違いです。
本格的な経営資産になるものについて経営者が学習せずに自己流に解釈してしまうと
『中小企業病』の一種になってしまうのです。
以前、『戦略は選択と集中である』という認識は間違いであることを告げました。『経営戦略を確立した後は、選択と集中である』ということが正しい認識であるのです。
なぜなら、経営戦略を確立していなければ選択しようにもできないのですから・・・。
『勉強させれば・・・』ということは、『学習の強制』になり長く続きません。
また、嫌々学習をすることから身に付きにくいという問題も発生します。
『学習する組織』が社内にビルト・インされていないために
社員が育たない、業績が伸びないということになっているのです。
学習する組織の研究については『組織学習が知識の習得と業績向上に関する長期的なプロセスであるという点では、おおむね合意しているようだが、そこから先は見解が分かれる』と☆デビッド・A・ガービンが指摘しています。
『業績向上に関する長期的プログラム』とは一体何を表しているのでしょうか?
『業績向上に関する長期的プログラム』とは
①ビジョン
②中期経営計画
③年度戦略
④年度数値計画
⑤市場開発、技術・製品・業態・サービス・ビジネスの開発
⑥バリューチェーンの強化
⑦ミッション・スティツメントの実践
⑧当社のマネジメント
⑨当社のリーダーシップ
⑩戦略ドメインの確立
などの全体を意味していると考えられます。
『なぜ戦略ドメインが業績向上の長期的プログラムの一環となるのだ??』
という疑問をお持ちになった読者はかなり優れていると思います。
松下電器の事業部再編の基礎にドメインがありました。
ドメインを同一とするということを基準に事業部を再編・集約したのです。
企業経営に方向性(パースペクティブ)を与え、戦力を集中するために多くの企業でドメインは必要とされています。
年度計画が『数値目標=予算』『定性的目標』となって社員レベルにまでおりてきている企業が数多く見られます。
これらは実現・達成していくことが求められているのです。
しかし、基本的な目標である売上、利益、在庫予算などを会社が決定していては『目標による管理』は成立しません。
予算設定そのものから社員が行なわない限り『目標による管理』は成立しないのです。私達は『数字の奴隷』になるために生まれてきたのではありません。
営業担当者、製造担当者自らが『目標数値=予算』を決め、
主体的に行動することによって実現していくことが人間本来のあり方であると私は確信しています。
そして、そのようなノウハウを開発し経営のあり方を社員参加型に転換することを私は提案しています。
会社の経営戦略を理解し、売上・利益目標を社員が自ら編成し、
参加型の経営を行なっていくことが21世紀の経営のあり方であると考えているのです。
特に、中小企業は大企業とは違い、
『現場第一線からの予算編成方式』が比較的容易に導入できます。
売上・利益予算が会社からのあてがいぶちではノルマになり、やる気も何も起こらないのは当然のことなのです。
社員が主体的に予算を設定し、自己の1年間を価値あるものにしていくことが求められています。『人間の値打ちは、今、取り組んでいる課題の値打ちによって決まる』という理念があるのです。
学習する組織には、何を、どのようにして学習していくのかが問われています。
学習にも当然、集中の原理が働きます。
ですから、業績向上のプログラムに沿って必要な課題を学習することが求められているのです。
これは『学習の効率化』という概念になります。
まずは、企業サイドに『業績向上の長期的プログラム』の確立が求められているのです。
『業績向上の長期的プログラム』の形式的なものは、
①年度数値計画
であり、
『業績向上の長期的プログラム』の実体を成すものは
②中期経営計画
③年度戦略
④市場開発、技術・製品・業態・サービス・ビジネスの開発
⑤バリューチェーンの強化
⑥当社のマネジメント
⑦当社のリーダーシップ
です。
つまり、学習する組織に必要とされる『業績向上の長期的プログラム』は、
ビジョン、戦略であり、その内容となる市場開発、技術開発、製品開発であったり、顧客志向で作りこまれる各種バリューチェーンであったりしているということなのです。
また、学習する組織に対して大きく方向性を与えるものが
⑧ビジョン
⑨ミッション・スティツメントの実践
⑩戦略ドメインの確立
というものです。
これらを整理して考えておくことが重要なのです。
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☆ 『学習する組織のマネジメント』ハーバード・ビジネス・レビュー 2003年3月号
経営論集は、ダイジェスト版になっています。
元原稿は『苦言・迷言・提言』といいまして、服部吉伸が不定期に配信しています。
配信先は、弊社のクライアント様、服部吉伸の知人・友人・教え子達であり、
様々な分野で活躍されている方たちです。
現在、元原稿である『苦言・迷言・提言』は、A4で400ページに達しています。
元原稿をご要望の方は
◆氏名
◆会社名、部署・役職名
をご記入の上、服部吉伸までメールにてご連絡ください。【メール送付先】
服部 吉伸<hatto.suru@nbcjp.com>
『起業時経営戦略論』という領域があります。
この分野はあまり研究されていません。
戦略の研究主体には、『シンクタンク』『大学教授』『経営コンサルタント』があります。
シンクタンクの研究は依頼主があって成立するものであり、
『起業時の経営戦略』についての依頼はほとんどないと思います。
大学教授は文献学が主体であり、かつ対象が大企業になりがちです。
そのため、多数のベンチャー企業を捕捉することが困難であるという事情があります。
経営コンサルタントが、1人でベンチャー企業経営の支援を多数行なうことができていない事情があります。
また、ベンチャー企業支援は経営コンサルテーションフィーがもらえないことが多く、
あまり経営指導をしていないという事情もあります。
中小企業総合研究所による『ベンチャー企業の経営戦略』という業績があります。
ベンチャー企業の起業時経営戦略の特徴は
①市場開発に大きく傾斜している
②市場分析を詳細に行なう
③どこで戦うかを明確にする
④どこなら勝てるかを分析する
⑤③④から、売上・利益を確保して橋頭堡を築く
⑥元々の製品・サービス・ビジネスが③④に合致していることは少ないことから迅速に変身する
という点にあります。
つまり、『市場開発×製品・サービス・ビジネスの変化・変身』ということを
いかにすばやく行なうかというところに起業時経営戦略の特徴があるということです。
例えば、ビジネス書の出版で起業したがビジネス書といっても幅が広いのです。
ハウツウ本も売れません。
正統的な学術書も売れません。
MBAでシリーズ化を図ろうして先行している出版社があります。
有名な著者は大手の出版社が押さえています。
大学の先生の本は売れません。
このような中で何を出版すればよいのかということになります。
そこで、どこの出版社も手掛けていない領域に焦点を当てて
①学習する組織を訴える
②学びの多様化を訴える
③中小企業向けの小さなケースを開発する
④現場にマッチングしたケースを多数開発する
⑤ケース分野で、橋頭堡を築く
⑥力をつけて、シリーズ本に挑戦する
といった戦略を形成することが可能になってきます。
もし、私が元出版社の編集者で出版社を起業しようとしていたら、
以上のような経営戦略を採用すると思います。
『シード』
↓
『製品・サービス・ビジネスの開発』
↓
『ビジネスプランの策定』
↓
『起業』
↓
『市場との遭遇』
↓
『市場との調整』
↓
『起業時経営戦略の革新』
↓
『売上確保』
という流れになっています。
バチッと市場にマッチングする製品・サービス・ビジネスというものの方が少ないのです。起業後に多くのアントレプレナーが気付くことは、
市場を知っているつもりであって、実際には知らなかったということです。つまり、製品・サービス・ビジネスがトンチンカンなものになっていたということを痛感させられるのです。
ここでの自己改革能力、自己刷新能力、市場とのマッチング能力が極めて重要です。
また、ここを救ってくれるのが『ポーターの5フォース分析』です。
アメリカでいくつもプレゼンテーションを受けましたが、
ベンチャー企業のビジネスプランの多くが『ポーターの5フォース』に沿って展開されていました。
ポーターの理論の特徴は、
極めて明快であり、理解しやすく、市場に対する理解が促進されるという点にあります。
そのため、どこで戦うか、何で戦うべきかが明確になってくるのです。
ただし、分析が大きすぎて、天下を取ったかのような分析になっており、
思わず笑ってしまったというプレゼンテーションの事例もありました。
ですから、業種・業界の競争状態の分析ではなく、
○○業種の××商品における競争状態というように絞り込んだ分析が必要になってきます。
例えば、表面処理のコーティング業界の競争状態の分析ではなく、
ウレタンコーティング、フッソ樹脂加工というように小さく具体的に絞り込むことが必要だということです。
起業時経営戦略は市場において一定の売上高を確保する、
つまり橋頭堡を築くということが最も先鋭なものと存在しています。
ここから、社員の市場適応教育、製品・サービス・ビジネスの修正、仕入先の確保、外注先の確保、以上を実現するための資金確保というものが浮上してきます。
組織の確立などは、儲かって少し落ち着いてからの話です。
社是、経営理念の確立などはもっと後の話です。
ある結婚披露宴でのことです。
通常、結婚披露宴というと新郎新婦の親族、友人などの席が左右にあります。
この披露宴でも左右に席が分かれていました。
少し違ったのは、真ん中に15人ほどの来賓の席が用意されていたことでした。
新郎がIPOを支援したベンチャー企業の社長が招待されていました。
このうちの何人かは私も知っている社長でした。
新郎は優秀なベンチャーキャピタリストだったのです。
彼は『ビジネスプランもさることながら、マネジメントチームがしっかりしていたから投資をする』というベンチャーキャピタリストの基本をしっかりと確立していました。
ベンチャー企業では立ち上げたアントレプレナーという『ただ1人のリーダーに戦略形成のプロセスを集中させている』のは確かです。
しかし、アントレプレナーには創発的な人は多いが実務型でない人が多数存在しています。
アントレプレナーの経営戦略が社会に通用する市場開発、仕入先開発、製品・サービス・ビジネスの改良などになっているかというと大きな疑問があります。
営業、社員の能力開発、訓練、システム開発、オペレーション、管理会計による月次決算、プロフィットセンターの設定、組織の確立などの実務は誰が行なっているのでしょうか。
アントレプレナーの戦略を理解したマネジメントチームが実務を行うのです。
ベンチャー企業のマネジメントチームは
①専務、常務などという名称を使用しない
②財務責任者、営業責任者、システム開発責任者、製造責任者という役割を明確にした組織を確立する
という特徴を持っています。
求められている能力は『高い専門性』です。
このベンチャーキャピタリストは、
ベンチャー企業に対する評価基準である新規性・独創性、市場性、競争優位性、拡張性・伸張性、収益性以外にマネジメントチームの人材、執務レベル、能力水準などをしたたかに評価していたのです。
あるベンチャー企業の貸借対照表が左右で100万円違っていました。
合計欄の数字は合っていたのですが、検算すると100万円合っていなかったのです。
この案件には投資を実行しませんでした。
しばらくすると、このベンチャー企業は倒産しました。
このベンチャー企業はマスコミがもてはやしており、
10数社のベンチャーキャピタルが投資していたのですが・・・
『本質は、現象せざるをえない』といったのは、
ウラジミール・イリイッチ・レーニンでした。
彼は、ここで『おかしい』と感じたのです。
ベンチャーキャピタリストには、ベンチャー企業に対して
①製品・サービス・ビジネスを評価する
②経営能力を評価する
③ソリューション力を評価する
ということが求められます。
この評価以外に
④おかしい
⑤何をやっているのだ
と感じる能力が必要とされているのです。
つまり、ベンチャーキャピタリストには投資することと
投資しないことの相反する能力が求められているのです。
マネジメントチームとは、日本語で言うと、『経営陣』ということになります。
この優劣は、すべての企業経営に当てはまります。
以前、ある経営者に
『先生、考えるのは私。社員は私の言うとおり動けばよいのです。先生の指導は、マネジャーを作ろうとしている。そんな回りくどいことはもういいのです』と言われたことがあります。
私は、この会社の経営コンサルテーションを辞めさせていただきました。
この会社は3年前に倒産しています。社員により早く経営能力を持たせ、幹部社員・管理者と語り合いながら経営を進めていくことが経営の基本なのです。
各部門に優秀な部長が1人いれば、経営になるのです。
優秀とは、『社長の戦略を理解し、各部門は何をすべきかを割り出し、社長と報告・連絡・相談を密にして取り上げた課題をソリューションしてくれる。そして、『来期は私の担当している部門は○○と××を行います』と部門戦略を確立し、それを実現してくれる主体性としたたかな能力をもった人のこと』をいうのです。
マネジメントチームを新たな視点で構築していくことが求められています。
それはベンチャー企業経営から学ぶことです。
なぜなら、ベンチャー企業経営は基本をしっかりと踏まえているからです。
優れたベンチャーキャピタリストは、優れた経営コンサルタントでもあると思います。